不妊治療を考え始めたとき、最初に迷いやすいのが「どのクリニックに通うか」という選択です。
検索するとたくさんのクリニックが出てきますが、「何を基準に比べればいいの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
不妊治療では何度も通院する必要があるため、治療内容だけでなく、通いやすさや費用、医師からの説明の受けやすさなども大切なポイントです。
また、実際に通い始めてから「自分には合わないかも」と感じた場合は、転院を検討することもできます。
この記事では、不妊治療のクリニックを選ぶときに見ておきたいポイント、初診の前後で確認しておきたいこと、転院を考えるときの判断や進め方についてわかりやすく解説します。
これからクリニックを探す方はもちろん、今の通院先について悩んでいる方も、ぜひ参考にしてみてください。
不妊治療のクリニックを選ぶときに見ておきたいこと
クリニック選びをする際に比べるべき項目はたくさんありますが、そのすべてを細かく見比べようとすると、かえって迷ってしまうことがあります。
まず押さえておきたいのは、無理なく治療を続けられるかどうかに関わる部分です。
治療内容は医師が状態を見ながら決めていくものですが、通いやすさや費用の見通しなどは、自分の生活に合っているかという視点から考えることができます。
ここでは、クリニックを比較するときにまず見ておきたいポイントを3つ紹介します。
通いやすさは治療を続ける前提になる
不妊治療の通院は、月に一度の定期受診とは進み方が異なります。
こども家庭庁の情報サイト「みんなで知ろう、不妊症不育症のこと」では、一般不妊治療の場合、女性の排卵周期に合わせて月に2〜6日ほどの通院が必要と説明されています。ただし、実際の通院頻度は、治療内容や体の状態によって変わります。
また、通院日は排卵の状況に合わせて決めるため、自分の予定に合わせて通院日を調整できるとは限りません。そのため、自宅や職場からの移動時間、診療時間、休日診療の有無などは、通いやすさを考えるうえで大切なポイントです。
移動時間や待ち時間、診察時間を合わせて、何時に出発すれば間に合うのか、どのくらいの時間を確保しておけばいいかなど、一度計算してみましょう。
さらに、予約の取りやすさや、オンラインで予約変更ができるかどうかも確認しておくと安心です。自分の生活に無理なく組み込めるかをイメージしながら選んでみてください。
どの治療まで受けられるかを確かめる
不妊治療は、タイミング法や人工授精といった一般不妊治療と、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療に分けられます。
こども家庭庁の情報サイトでも、まずは一般不妊治療を行い、妊娠に至らない場合に生殖補助医療へ進むのが一般的と説明されています。
一方で、不妊の原因によっては、最初から生殖補助医療を選ぶこともあります。つまり、通い始めたときに考えていた治療と、その後に必要になる治療が変わることもあります。
検討しているクリニックの対応している治療の範囲と、対応していない治療が必要になった場合の紹介先を確認しておくと安心です。
通いやすいクリニックで一般不妊治療を受け、必要になった段階で連携先を紹介してもらうという進め方もあります。
どの治療に対応しているかは、こども家庭庁の「医療機関検索」から、都道府県や治療内容を選んで絞り込むこともできます。公的な情報をもとに候補を探すことで、クリニック選びの負担を少し減らせるでしょう。
→治療の種類や進み方については、こちらの記事も参考にしてみてください。

先の治療まで知っておくと、今の自分に合ったクリニックかどうかを考えるときの材料になります。
費用や保険の適用範囲を確認する
費用の見通しが立たないまま通院を続けることは、気持ちの負担にもなりやすいものです。
令和4年4月から、タイミング法や人工授精などの一般不妊治療と、採卵や胚移植などの生殖補助医療の基本的な治療が公的医療保険の対象になりました。ただし、すべての検査や治療が保険診療になるわけではありません。
こども家庭庁の解説記事「不妊症・不育症へ向き合いやすく 保険診療の基礎知識」によると、生殖補助医療では、治療開始時点で女性が43歳未満であることが条件とされています。
また、保険診療で行う胚移植の回数には上限があり、初めて胚移植に係る治療計画を作成した日の年齢が40歳未満なら通算6回まで、40歳以上43歳未満なら通算3回までとされています。この回数は子ども1人ごとに数えられるため、出産後に次の妊娠を目指す場合は、あらためて回数が設定されます。
なお、こうした年齢や回数の条件は生殖補助医療に関するもので、タイミング法や人工授精とは扱いが異なります。
自分が受ける治療によって、保険の条件が変わることを知っておきましょう。
治療内容によって保険の扱いが変わるため、すべてを一律に考える必要はありません。自分がどの段階の治療を受けるのかを確認したうえで、費用について考えることが大切です。
治療費の総額は治療の進み方によって変わるため、最初から正確な金額を出すのは難しいものです。それでも、保険と自費の違いや費用について、分かりやすく説明してくれるかどうかは、クリニック選びの大切な比較ポイントになります。
初診の前後で確認しておきたいこと
候補がいくつかに絞れたら、次は実際に受診をする段階です。
初診では、問診や診察を受け、必要に応じて検査や今後の治療方針が検討されます。説明の分かりやすさや、質問への対応など、実際に受診してみないと分からない部分を確認する機会にもなります。
ただ、初めての受診では緊張して、聞きたかったことを聞けないまま終わることもあるでしょう。持ち物や質問を事前に整理しておくと、限られた診察時間を有効に使いやすくなります。
初診までに用意しておくもの
初診では、これまでの月経の状況や体の状態について尋ねられます。事前に情報を整理しておくと、診察時にもスムーズに伝えやすくなります。
最終月経の開始日や月経周期がおおむね何日か、これまでにかかった病気や手術歴、服用中の薬などは、あらかじめメモにまとめておくと答えやすくなります。月経について気になる症状や、これまでの治療歴があれば、あわせて整理しておくとよいでしょう。
パートナーの検査についても、可能であれば初診時に相談できるよう準備しておくと、その後の進め方を考えやすくなります。
基礎体温の記録や他院の検査結果が手元にあれば、予約時の案内を確認したうえで持参すると役立つことがあります。ただ、用意できないものがあっても、受診を先延ばしにする必要はありません。
→どんな検査があるのかについては、こちらの記事も参考にしてみてください。

初診で何をするのかを知っておくだけでも、受診への不安を和らげるきっかけになります。「これも聞いておけばよかった」とならないよう、気になることは質問として書き出しておくと安心です。
初診で聞いておきたい質問
初診では、必要な検査やその結果を踏まえて今後どのように治療を検討していくのかについて説明を受けることがあります。
その際は、どのような検査を受けるのか、結果をどのように治療方針へつなげていくのかを確認しておくと、その後の流れをイメージしやすくなります。
また、通院の頻度がどのくらいになるのか、仕事との調整が必要になりそうな時期があるのかなど、生活面についても確認しておきたいポイントです。
質問することは失礼ではなく、治療について理解するために大切なやりとりです。
質問への回答は、その場でメモしておくと、後から見直したり、パートナーと確認するときにも役立ちます。
すべてを一度の診察で聞き切る必要はありません。通院を重ねるなかで、気になったことを少しずつ確認していく方法でも大丈夫です。
説明の受け止め方とパートナーとの共有
説明が分かりやすいかどうかは、治療を続けるうえで大切なポイントです。
一度の受診でも、専門用語をかみくだいて説明してくれるか、質問に丁寧に答えてくれるかなど、クリニックの対応を知る手がかりになります。
ただし、初診の印象だけでクリニックの良し悪しを決めるのは難しい場合もあります。その日の混雑状況や担当する医師によって、受ける印象が変わることもあるためです。
また、不妊治療はパートナーと一緒に治療方針を考えていく場面も多くあります。
自分とパートナーのどちらか一方だけが説明を聞いている状態が続くと、お互いの理解に違いが生じ、治療について話し合うときに迷うこともあります。
都合が合えば一緒に説明を聞くのが理想ですが、難しい場合は、診察後に説明された内容を伝えるなど、無理のない方法で情報を共有しておくことが大切です。
転院を考えるときの判断と進め方
最初に通い始めたクリニックが、そのまま最後まで自分たちに合い続けるとは限りません。
治療の段階が進んだり、仕事や住まいの状況が変わったりすると、通いやすさや必要な治療など、クリニックに求める条件も変わっていきます。
転院はネガティブなものではなく、その時点の自分たちに合った環境を選び直すための選択肢の一つです。
ここでは、転院を考えるきっかけになりやすい場面や、実際に転院するときに確認しておきたいことを紹介します。
転院を考えるきっかけになりやすい場面
転院を考えるきっかけの一つが、通院そのものが生活の負担になってきた場合です。
仕事の都合や住まいが変わるなど、治療とは別の事情によって、これまで通っていたクリニックに通うことが難しくなる場合もあります。
また、治療の段階が進み、今のクリニックでは対応していない治療が必要になることもあります。
他に、説明が分かりにくかったり、質問しづらかったりする状態が続き、治療について不安を抱えたまま通院している場合も、転院を考えるきっかけの一つです。
気になることがあれば、まずは主治医に相談してみるのがいいでしょう。相談したうえで、それでも条件が合わないと感じるのであれば、転院を検討して構いません。
相談すること自体が難しい場合は、転院を考えているクリニックや相談窓口に先に話を聞いてみることもできます。
また、転院するか迷っている段階でも、別のクリニックで相談してみることで、今後の選択肢を整理しやすくなる場合があります。
転院前に主治医へ確認しておくこと
転院を決めたら、今の主治医に伝えておきたいことや、確認しておきたいことがいくつかあります。
これまでに受けた検査の結果、実施した治療の内容や回数、使用した薬の種類などは、次のクリニックでも必要になる情報です。同じ検査をもう一度受けずに済む場合もあるため、検査結果や治療の記録を受け取れるか確認しておくと安心です。
また、治療の途中で転院する場合は、どのタイミングで区切るのがよいかも確認しておきたいポイントです。
治療内容によっては、予定している処置などとの兼ね合いを考える必要があるため、主治医に相談しておきましょう。
転院を伝えることに気まずさを感じるかもしれませんが、治療を受ける場所を選び直すことは患者の権利であり、悪いことではありません。
伝え方に迷う場合は、主治医だけでなく、受付や相談窓口に転院について相談する方法もあります。必要な情報を整理してから転院先を決めることで、次のクリニックでもこれまでの治療を踏まえて相談しやすくなります。
紹介状と検査データの引き継ぎ
転院の準備で中心になるのが、「診療情報提供書」という書類です。いわゆる紹介状にあたるもので、これまでの治療経過や検査結果などがまとめられています。
発行までに日数がかかることもあるため、転院先が決まったら早めに依頼しておくと安心です。
あわせて、自分でもこれまでの治療経過をメモに残しておくと、転院先での初診時に説明しやすくなります。受けた検査の時期、治療の内容や回数、薬の名前や量など、分かる範囲で整理してみてください。
引き継ぎの準備をしておくと、転院先でもこれまでの治療内容を確認しやすくなります。ただし、予約状況や月経周期、再検査の必要性などによっては、治療を再開するまでに時間がかかることもあります。
転院先の受け入れ時期や、初診後の流れも早めに確認しておくとスムーズです。
まとめ
不妊治療のクリニック選びで最初に見ておきたいのは、通いやすさ、対応している治療の範囲、費用や保険の説明の3つです。
一般不妊治療でも通院の目安は月に2〜6日ほどとされているため、無理なく通い続けられる場所かどうかは、大切な判断材料になります。
初診に向けては、月経の記録や過去の病気や手術歴などをメモにまとめ、聞きたいことを整理しておくと、限られた診察時間でも確認しやすくなります。
保険が使える範囲については、生殖補助医療に年齢や回数の条件があることも押さえておきたいポイントです。
通い始めてから条件が合わなくなったときは、主治医に相談したり、転院先の候補や相談窓口に話を聞いたりする方法もあります。
ただし、受診や服薬をやめる、薬の量を変えるといった判断は自己判断で行わず、必ず医療機関に確認してください。
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