妊活というと女性の体づくりに意識が向きがちですが、実は男性側のコンディションもとても大切です。
不妊の原因は女性だけにあるわけではなく、約半数には男性側の要因が関わっていると言われています。そのため、近年は精子の状態をサポートする食事や生活習慣にも注目が集まっています。
なかでも重要とされているのが、男性ホルモン「テストステロン」に関わる栄養素です。
この記事では、当メディアで監修をお願いしている管理栄養士の先生の知見をもとに、テストステロンアップに効果的な食品や、毎日の食事に取り入れるコツをわかりやすくご紹介します。
テストステロンを高める栄養素とは
テストステロンは、筋肉や骨格など男性らしい体づくりに関わるだけでなく、精子の生成にも関係している大切なホルモンです。
毎日の食事に含まれる栄養素の中には、テストステロンの合成をサポートしたり、精子を酸化ストレスから守ったりする働きが期待されているものがあります。
特に注目されているのが、亜鉛やコエンザイムQ10などのミネラル・抗酸化成分です。
ここでは、研究でも注目されている栄養素について、妊活との関わりを含めながらわかりやすくご紹介していきます。
亜鉛はテストステロン合成の要
亜鉛は、体内で300種類以上の酵素に関わる必須ミネラルで、テストステロンの合成にも深く関係しています。
管理栄養士の先生によると、亜鉛はテストステロンだけでなく、精子の濃度やDNAの安定性にも関わる重要な栄養素とされています。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人男性の亜鉛の推奨摂取量は1日9.0〜9.5mgとされています。
ただ、実際にはこの量を十分に摂れていない男性も少なくありません。亜鉛は体内で作ることができないため、毎日の食事から継続して摂ることが大切です。
また、納豆や味噌などの発酵食品は、亜鉛の吸収を妨げる成分が分解されているため、比較的取り入れやすい食品と考えられています。
コエンザイムQ10で精子のエネルギー産生をサポート
コエンザイムQ10(CoQ10)は、細胞がエネルギーを作る際に必要とされる成分で、抗酸化作用を持つことでも知られています。
男性不妊に関する複数の研究では、CoQ10の摂取によって精子の運動率や形態の改善がみられたという報告があります。ただし、妊娠率への影響については、まだ十分には明らかになっていません。
また、一部では性ホルモン値の変化が確認された研究もありますが、結果にはばらつきがあり、引き続き研究が進められている段階です。
CoQ10は、青魚や内臓肉などに含まれています。ただ、年齢とともに体内で作られる量が減るとされているため、30代以降の男性は特に意識して摂りたい栄養素のひとつです。
研究では、1日200〜400mgを3〜6か月継続して摂取することで効果が見られたという報告があります。
サプリメントを利用する場合は、摂りすぎを避けるためにも、必要に応じて医師や薬剤師に相談しながら取り入れましょう。
そのほかに意識したい栄養素
亜鉛やCoQ10以外にも、妊活中に意識したい栄養素はいくつかあります。
農林水産省の情報によると、オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)は体内で作ることができない必須脂肪酸で、主に魚介類に多く含まれています。
管理栄養士の先生によると、オメガ3脂肪酸は精子の膜構造を保つ働きや、血流をサポートする役割が期待されているとのことです。
また、セレンとビタミンEは抗酸化作用を持つ栄養素で、一緒に摂ることで精子を酸化ストレスから守る働きが期待されています。
さらに、赤身肉などに含まれるL-カルニチンは、精子の運動率や形態の改善、精液量の増加に関与するという報告もあります。
これは、精子が作られて成熟するまでに約74日かかるためです。ひとつの栄養素だけに偏るのではなく、バランスよく取り入れていきましょう。
テストステロンアップにおすすめの食品
栄養素の働きがわかったところで、次は実際にどんな食品を取り入れればよいのかを見ていきましょう。
毎日の食事に使いやすい身近な食材の中にも、テストステロンに関わる栄養素を含むものはたくさんあります。
ここでは、亜鉛やCoQ10、オメガ3脂肪酸などを効率よく摂れる食品を、カテゴリーごとにわかりやすくご紹介していきます。
特別な食品を用意する必要はないので、ぜひ買い物に行った際に意識してみてください。
牡蠣・肉類は亜鉛の宝庫
亜鉛を効率よく摂取できる食品の代表格が牡蠣です。
牡蠣は食品の中でも亜鉛含有量が特に多く、生牡蠣2〜3個(約60g)で1日の推奨量に近い量を摂ることができます。
牡蠣が苦手な方や手に入りにくい場合は、牛肉の赤身や豚レバー、鶏むね肉などもおすすめです。特に牛肉は、亜鉛とL-カルニチンの両方を含んでいるため、妊活中の男性にとっておすすめの食材といえます。
また、卵黄や大豆製品(納豆・豆腐)、カシューナッツなどにも亜鉛が含まれているため、肉や魚が苦手な方はこうした食品を組み合わせるのもよいでしょう。
以下の表は、主な食品に含まれる、精子の質に関わる栄養素をまとめたものです。
| 栄養素 | 主な働き | 豊富に含まれる食品例 |
|---|---|---|
| 亜鉛 | テストステロン合成、精子濃度・DNA安定性 | 牡蠣、牛赤身肉、豚レバー、卵黄、納豆 |
| コエンザイムQ10 | 抗酸化作用、精子のミトコンドリア機能強化 | イワシ、サバ、ブリ、豚レバー、ピーナッツ |
| オメガ3脂肪酸 | 精子膜構造の改善、炎症抑制 | サバ、イワシ、サンマ、クルミ、アマニ油 |
| セレン | 精子DNAの酸化防止 | ブラジルナッツ、カツオ、サケ、卵黄 |
| ビタミンE | 精子膜の安定化、脂質の酸化防止 | アーモンド、アボカド、かぼちゃ、うなぎ |
| L-カルニチン | 精子の運動率・形態の改善 | 牛赤身肉、ラム肉、豚ロース、鶏むね肉 |
どれかひとつだけを集中的に食べるのではなく、さまざまな食品をバランスよく取り入れることが大切です。毎日の食事の中で無理なく続けられる組み合わせを意識してみましょう。
青魚・ナッツ類でオメガ3とCoQ10を補給
サバ、イワシ、サンマ、アジなどの青魚は、オメガ3脂肪酸とCoQ10を同時に摂れる食材です。
週に2〜3回、加熱調理した100g程度の青魚を食べることで、オメガ3脂肪酸を効率よく補えるとされています。
なかでも、サバ・サケ・イワシ・サンマなどは比較的水銀量が少ない魚とされており、妊活中でも取り入れやすい食材です。
一方で、メカジキやキングマグロなどの大型魚は水銀を蓄積しやすいため、食べる頻度には少し注意しておくと安心でしょう。
また、ナッツ類ではクルミにオメガ3脂肪酸、アーモンドにビタミンEが多く含まれています。あまり馴染みはないかもしれませんが、ブラジルナッツにはセレンが豊富に含まれています。
ナッツは間食にも取り入れやすいため、毎日の食事に無理なくプラスしやすいのも魅力です。
大豆製品・緑黄色野菜も忘れずに
大豆製品は、亜鉛を補えるだけでなく、良質なたんぱく質も摂れる便利な食品です。
管理栄養士の先生によると、煮豆を取り入れたり、カレーやサラダに水煮大豆を加えたりするなど、日常の食事で大豆を使う機会を増やすのがおすすめとのこと。
特に納豆や高野豆腐は、大豆製品の中でも亜鉛を比較的多く含んでおり、毎日の食事に取り入れやすい食材といえます。
また、ほうれん草やブロッコリー、アスパラガスなどの緑黄色野菜には、葉酸が豊富に含まれています。葉酸はDNAの合成や修復に関わる栄養素で、妊活中は女性だけでなく男性にとっても大切です。
野菜は1日350g(小鉢約5皿分)を目安に、毎食少しずつ取り入れていくと、栄養バランスを整えやすくなります。野菜が不足しがちなので、まずは意識することから始めてみてください。
効果を高める食べ方のコツ
せっかく栄養価の高い食品を選んでも、調理法や食べ方によっては栄養素を十分に活かせないことがあります。
特にオメガ3脂肪酸は熱や酸化に弱く、調理中に失われやすい性質があります。そのため食材選びだけでなく、調理の仕方を工夫することも大切です。
また、特定の栄養素だけを意識するよりも、食事全体のバランスを整えることが、結果的に続けやすさにもつながります。
ここでは、栄養を効率よく取り入れるための調理のコツや、妊活中に意識したい食生活のポイントをお伝えします。
魚の調理法で栄養を逃さない
オメガ3脂肪酸を効率よく摂るためには、調理法にも少し工夫が必要です。
管理栄養士の先生によると、刺身やカルパッチョなど、生で食べる方法は栄養をそのまま摂りやすく、おすすめの食べ方とのこと。
加熱する場合は、ホイル焼きや蒸し料理、煮付けなど、脂が流れ出にくい調理法がおすすめです。特に煮付けは、煮汁ごと食べることで溶け出した脂も一緒に摂取できます。
一方で、焼き魚は手軽な反面、脂が落ちやすいのがデメリット。皮付きのまま短時間で焼く、焦がしすぎないようにするなどの工夫で、栄養の損失を抑えられます。
調理が難しい日や忙しい日は、缶詰を上手に取り入れるのもおすすめです。無理なく続けられる方法を見つけながら、魚を食べる習慣を増やしていきましょう。
地中海式食事に学ぶバランスのよい食生活
特定の栄養素だけを意識するよりも、毎日の食事全体のバランスを整えることが、長い目で見ると大切です。
管理栄養士の先生によると、「地中海式食事」と呼ばれる食事パターンは、複数の研究で良好な精子状態との関連が報告されています。
地中海式食事では、魚を週2〜3回、野菜を1日350g以上、さらに全粒穀物や豆類、ナッツ類を日常的に取り入れることが基本とされています。
一方で、超加工食品(スナック菓子・インスタント食品など)や加工肉、糖質の摂りすぎ、トランス脂肪酸を多く含む食品は控えめにすることがすすめられています。
また、禁煙や節酒、十分な睡眠、適度な運動など、生活習慣を整えることも大切です。こうした習慣は、体の酸化ストレスを減らすことにつながると考えられています。
食事だけでなく、生活全体を少しずつ見直していくことで、妊活に向けた体づくりの効果が高まります。
夫婦で続けるためのポイント
妊活中の食事改善は、頑張りすぎず、無理なく続けることが大切です。
管理栄養士のアドバイスでは、最初から全てやろうとするのではなく、「魚曜日」を決めて週1回から始め、慣れてきたら週2回に増やしていく方法がおすすめとのことです。
また、調理の負担を減らすために、冷凍の切り身やサバ缶、刺身パックなど、下処理済みの食材を活用するのも続けやすさにつながります。
魚の臭みが気になる場合は、味噌漬けやレモン風味、カレー味など、少し濃いめの味付けにすると食べやすくなるでしょう。
さらに、「作れない日は外食や惣菜でもOK」と考えておくと、気持ちの負担を減らしやすくなります。
パートナーと一緒に献立を考えたり、買い物をしたりすることで、妊活への意識を共有しやすくなるのもメリットです。
完璧を目指しすぎず、二人で楽しみながら続けられる方法を見つけていくことが大切です。
まとめ
妊活中の男性にとって、食事を整えることは、精子の状態や体づくりをサポートする大切なポイントのひとつです。
亜鉛やコエンザイムQ10、オメガ3脂肪酸といった栄養素を意識して摂ることで、精子の運動率や形態、DNA安定性の改善が期待できます。
牡蠣や牛赤身肉で亜鉛を、青魚でオメガ3脂肪酸やCoQ10を、ナッツ類でセレンやビタミンEを補うなど、身近な食品を組み合わせてバランス良く食べることが大切です。
また、刺身やホイル焼き、缶詰は汁ごと活用するといった調理の工夫を取り入れることで、栄養を効率よく摂りやすくなります。
そして何より大切なのは、無理なく続けられる食生活を見つけることです。
地中海式食事のようなバランスのよい食事を参考にしながら、まずは週2回の魚料理など、できることから少しずつ始めてみましょう。
夫婦で楽しみながら取り組むことが、無理なく続けるコツです。
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